昨日の法曹養成制度検討会議の議論状況について、城北法律の種田和敏先生が詳しい報告をビギナーズや給費制訴訟のMLにあげてくれました。
多くの人に広めてほしいそうなので、引用しておきます。ちょっと長いですが、今出回っている情報の中で一番詳しい内容だと思いますので、ぜひ参考にしてください。種田さん、ありがとうございます。
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それでは、報告します。
なお、委員の詳細については、法務省のHP
(http://www.moj.go.jp/content/000106650.pdf)をご覧ください。
まず、座長が最後に取りまとめた発言を確認します。
佐々木座長:多数の意見は、貸与を前提に何らかの必要な措置を講じられないかというものだった記憶している。具体的にどうするかは、一律か個別か、寮や引越しの問題など、まだまだ整理が必要な点があることを確認した。今日はあえて細かいところまで確認することは遠慮する。しかし、重要な論点提起と方向性の提示をいただいたことは議事録にとどめる。
ここで、確認されたのは、①貸与制を前提とすること
②何らかの必要な措置が講じられないか検討すべきこと
③必要な措置の具体的な内容は、一律支援か個別支援か、
その範囲などをどうするか整理する必要があること
つまり、給費制復活ではなく、貸与制維持です。その上で、いまの貸与制を修正して、何らかの「必要な措置」を検討するという内容です。
「必要な措置」が主な必要な根拠は、実務修習地への引越や集合修習時の入寮などにおいて、修習生間の不公平があることを是正することにあります。
不公平の是正が主眼なので、基本的には個別支援となるはずです。
1人の委員が一律支援と言っているのは、個別的にすると制度設計が煩雑となることからくる現実的な対応としてです。
また、「必要な措置」の内容については、実費が想定されています。
具体的には、引越費用、旅費(実務修習地への赴任費用)、交通費、住居費が出てきました。修習生間の不公平を是正するということであれば、引越費用や旅費が認められやすいのかもしれません。
なお、「必要な措置」が認められたとして、それが給付型になるのか、貸与型になるのかは議論されていません。
ちなみに、給費制復活派(給費派)、貸与制維持派(貸与派)、必要な措置を加え修正した貸与制維持派(修正貸与派)に分類すると、
・給 費 派:和田委員、丸島委員、田島委員、国分委員 …4人
・貸 与 派:鎌田委員、田中委員、伊藤委員 …3人
・修正貸与派:南雲委員、清原委員、萩原委員、宮脇委員、岡田委員、久保委員、井上委員 …7人
※ 翁委員と山口委員は欠席。修正貸与派も合わせると、貸与を前提としているのは、10人。
以上を踏まえ、3月に修習生の経済的支援に関する素案が作成されますが、
この流れをみると、「貸与制+引越費用など実費を支援(給費か貸与か不明)する措置」で4月のパブコメに突入すると思います。
そうすると、パブコメが大切になりますね!
それでは、以下で個別の委員の発言要旨をみてみましょう。
南雲委員:【修正貸与派】
給費制の復活は現時点ではない。ただ、貸与制の下で誰をどのように支援すべきか丁寧に議論すべき。
法科大学院の統廃合により減った補助金を財源として支援することも議論すべき。
清原委員:【修正貸与派】
実費的な費用を支給する必要性については、一定の共通理解が得られるのではないかと感じる。
引越費用や住居費、修習先への交通費など実費的な費用を支給する必要性はある。
ただ、給費制に戻すことは困難と感じている。
1日2000円などとして、一律支給することも検討すべき。
生活費については、返還猶予を含めた貸与維持の立場。
ロースクールへの補助金見直しでできた費用を財源にすれば裏付けのある提案となるはず。
鎌田委員:【貸与派】
法曹志願者への経済的支援の財源を法科大学院への財政支援を削減して行うのは反対。数万円の給費を与えたとしても、ほとんど効果がない。
和田委員:【給費派】
私は給費制を復活すべきと考えている。
貸与制への移行は法曹の道を遠ざけている。
法曹の世界に一層人が集まらなくなるのを恐れている。
多くの弁護士会で給費制復活の決議があがっていることを考慮すべき。
修習に専念してもらうためにも給費が必要。
荻原委員:【修正貸与派】
貸与の原則を守りながら、不公平部分を是正すべき。
貸与制の中身だけでも民間会社から見ると十分有利な措置と思う。
残る問題は多少のアンバランスを調整すること。
宮脇委員:【修正貸与派】
貸与制については維持すべき。
経済的格差があるということを前提すると、一律に資金を提供することは不公平。
旅費や住居手当は検討しなければならない。
丸島委員:【給費派】
一定額の給与を支給すべき。
諸外国では実務トレーニングを有給で行っている。
現状よりよい経済的支援を行わなければならない。
経済問題が法曹志願者減少の一因になっていることは明らか。
貸与制を前提とするなら、いま一歩前進する措置について合意したい。その際には、日額旅費の規程や研修医の例も参考になる。
田島委員:【給費派】
一般国民の目から見ておかしいのは、試験に受かった後が悪くなっていること。
法曹三者は国家の中枢を担う大切な部分。
そこを借金でスタートさせるのが当たり前という風潮はおかしい。
夢を抱き、苦労して合格した人たちが安心して研修できるものにすべきだ。
金を貸しているからいいじゃないか、というのは乱暴すぎる。身分保障をすべき。
田中委員:【貸与派】
給費制は国民の理解が得られない。
貸与制はかなり有利な条件で貸し出すもの。
修習生の生活が成り立たないということはまず考えずらい。
立法政策を変更する新たな事情が生じているかというと疑問を感じる。
一律に金銭を支給するのは国民の理解が得られない。
諸外国との比較も慎重に考えるべき。
不均衡が生じているという意見があった住居費や転居費用だが、
住居費は貸与額の加算制度があるし、転居費は給費のときにもなかった。
見過ごせないほどの不均衡が生じているとは思わない。
国分委員:【給費派】
社会状況そのものが変化して、制度そのものの成功がおぼつかなくなっている。
給費制を復活すべきと考える。
修習生にしわ寄せが行っていることが大きな問題。
いずれ儲けるのだからいいじゃないか、という考えはおかしい。
伊藤委員:【貸与派】
フォーラムのときと状況は変わっていない。
給費制に戻そうという議論には賛成できない。
専念義務を少し緩めてもいいのではないか。
国に勉強しろと言われているから金をよこせ、というのは違う気がする。
岡田委員:【修正貸与派】
貸与制で基本的には行くべきだろう。
ただ、経済的に困っている人には特別な配慮が必要。
修習生もアルバイトをしてもいいんじゃないかと思う。
久保委員:【修正貸与派】
フォーラムから1年で元に戻すのは現実的でないし、国民の理解が得られない。
ただ、引越費用や寮に入れない人たちについて、実費弁済の方向から解消すべき。
法学部志願者も減少していることに非常に危機感がある。
井上委員:【修正貸与派】
貸与制については維持すべき。
経済的格差があるということを前提すると、一律に資金を提供することは不公平。
旅費や住居手当は検討しなければならない。
困っている人にはきめ細かく支援する必要がある。
以上です。
個人的には、当事者である法曹志願者を思って発言している人を応援したいと心から思います!
厳しい状況ですが、パブコメなど、まだまだやれることがありますので、元気にがんばりましょう!
(引用終わり)
新しくフォーラムに入った委員の頑張りは素晴らしいと思います。でも、まだまだ給費制復活にはほど遠いですね。
2月4日には給費制訴訟のメンバーでまた記者会見をやることになりました。
今回は長くなってすみません。最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。
(ブータ)